元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
「その⋯⋯ジョージアに会っても良いぞ⋯⋯」
情けないことに彼女に好かれる為に何をして良いのか全くわからなかった。だからと言って、彼女の希望を叶える為に浮気相手に会っても良いと言っている俺はどうかしている。
「おびき寄せて、彼を殺す気ですか? 結構です。私と彼は会えなくても、心は通じ合ってますので」
モモは俺の傷つく言葉を平気で言ってくるようになった。
そのことから、彼女が早く俺から離れたいと思っていることが伝わってくる。
まるで、近くにいても心の通じない俺と彼を比べられているようだ。
誰かと比べられて劣っていると言われる事はおろか、誰かと比べられることさえ初めてだ。
(こんなにも不快なんだな⋯⋯)
俺はモモと誰かを比べた事はない。
彼女は俺にとって最初からずっと誰とも比べられない唯一無二の存在だ。
「殺さないよ。君にとって大切な人間は殺さない」
「申し訳ございませんが、信用できません。アレク、私は建国祭の準備がしたいので、そろそろ良いですか?」
気まずそうな申し訳なさそうな顔で、自分の前から消えてくれと彼女が言っている。
いっそ、毒を盛った俺を軽蔑するような表情で拒絶してくれれば良かった。
彼女の気持ちを無視して、彼女の隣に居続けることが俺の立場なら可能だ。
でも、こうやって俺の気持ちを気にしてくれるような素振りも見せるから彼女の体だけでなく心も手に入れられるのではないかと期待してしまう。
「他国にジョージアを逃したのか? 戸籍を買って他の人間として暮らさせている? 君は凄いな、反逆者一族の男にそこまでの手助けができるなんて⋯⋯」