元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

「アレク⋯⋯。本当なら、お父様を殺めた一族の血を根絶やしにしたかったのですよね。私が憎いのではないですか? すぐにでも目の前から消えますよ」

 モモが俺の手を握りなら伝えてくる。
 彼女の手が小さくて両手で俺の手を握るのがやっとだ。
 それでも、俺は彼女がどれだけ危険な程に切れる女か知っている。

 彼女は俺から逃れる為に今、演技をしている。
 俺が憎いのは俺の隙を縫って父を殺したレイモンド・プルメル元公爵だけだ。
 マリリンはどうでも良いし、ジョージアは死んで欲しいけれど生きていても俺の目に入らないなら良い。
 
「どうでも良い⋯⋯本当のことを言うと、今、モモ以外の人間のことはどうでも良いんだ⋯⋯」
 俺はモモを思い切り抱きしめた。
 俺の恥ずかしい本心を伝わらないと分かってても伝える。

 逃げようとしないで欲しい、前のように俺を慕って欲しい。
 俺のした過ちを一生許さなくても良いから、側にいて欲しい。
 そんな想いを必死に込めた。

 
 
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