元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
私の嗅覚は相当敏感になっていた。
クレアは無言で香油の蓋を閉めた。
「クレア、丁寧な仕事をしてくれて、ありがとうございます」
私がお礼を言うと、彼女は俯いてしまった。
「モニカ様、こちらのお部屋で陛下がいらっしゃるまでお待ちください」
「ここが、私の部屋なの? 凄く素敵ね。絨毯の刺繍も細かいわ。職人の腕が良いのね」
クレアに案内された寝室は、私がマルテキーズ帝国で使ってた部屋の3倍くらい広かった。
「⋯⋯モニカ・マルテキーズ様ですよね?」
「そうですわ。もう、私の名前覚えてくれたのですね。嬉しいですクレア」
「私の名前も覚えて頂きありがとうございます」
クレアが少し照れ笑いをしながら、お辞儀をした。
(よかった、少し彼女も私に打ち解けてくれたのかも⋯⋯)
私は目を瞑ってフカフカのベッドにゴロリと転がった。