元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。


 私の嗅覚は相当敏感になっていた。
 クレアは無言で香油の蓋を閉めた。

「クレア、丁寧な仕事をしてくれて、ありがとうございます」
 私がお礼を言うと、彼女は俯いてしまった。

「モニカ様、こちらのお部屋で陛下がいらっしゃるまでお待ちください」
「ここが、私の部屋なの? 凄く素敵ね。絨毯の刺繍も細かいわ。職人の腕が良いのね」
 クレアに案内された寝室は、私がマルテキーズ帝国で使ってた部屋の3倍くらい広かった。

「⋯⋯モニカ・マルテキーズ様ですよね?」
「そうですわ。もう、私の名前覚えてくれたのですね。嬉しいですクレア」
「私の名前も覚えて頂きありがとうございます」
 クレアが少し照れ笑いをしながら、お辞儀をした。

 (よかった、少し彼女も私に打ち解けてくれたのかも⋯⋯)

 私は目を瞑ってフカフカのベッドにゴロリと転がった。
< 16 / 159 >

この作品をシェア

pagetop