元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

3.早く、陛下の妻になりたいので今サインします。(アレキサンダー視点)

 バラルデール帝国の皇帝になり、半年で早く妻を娶るようにと周囲が煩くなった。

 半年前、皇帝であった父が亡くなったのは間違いなく暗殺だ。
 
 父アルガルデ・バラルデールは保守的で、好戦的なレイモンド・プルメル公爵と度々対立した。

 父の死因は心不全とされているが、俺はレイモンド・プルメル公爵が裏で手を引いたと思っている。

 若くして公爵位を継いだレイモンド・プルメルは、貴族派の筆頭で宰相職にもついていて強い発言力を持っている。

 父、アルガルデ・バラルデールは高齢で政務から離れ気味にもなっていたので、レイモンド・プルメル公爵が俺の留守中には皇帝のように振る舞っているとも聞いていた。

 俺がレンダース領の暴動を鎮める為に遠征している時に、父の死の知らせが届いた。
 バラルデール帝国に戻るなり、俺は皇帝に即位した。

 俺はどこか壊れているようで、人を切ることに何の躊躇いもなかった。

 むしろ、窮屈な皇城でくだらない貴族の権力争いを見ていると戦場に出たくなった。
 たかだか、辺境の領地の暴動鎮圧に俺が出向いたのは暴れたくなったからだ。
 まさか、俺の留守中に父が亡くなるとは思っても見なかった。

 俺の荒っぽさは皇太子時代からバラルデール帝国だけでなく世界中に伝わっていて、皇帝になると「暴君」と影で囁かれるようになった。
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