元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

4.私が陛下の為にできることはないかしら?

 目が覚めた時、隣にアレキサンダー皇帝はいなかった。

 私は酷く寂しい気持ちに襲われた。
(また、捨てられるのが怖い⋯⋯)

 気だるい体を起こして、呼び鈴を鳴らすとクレアがやってきた。
 服を着替えるのを手伝って貰い、食堂に向かう。
(ルミナは本当にどこに行ったのかしら⋯⋯後で陛下に聞かないと⋯⋯)

 陛下と一緒に食事をとれると期待したのに、私はまた1人で食事をするようだ。

「朝食に陛下はいらっしゃらないの?」
「陛下は既に朝食を済ませております」
(今日も、料理からほのかに草の匂いがする⋯⋯苦手な香りづけ⋯⋯)

 クレアの言葉に私はアレキサンダー皇帝の体が心配になった。
(まだ、日が昇って間もない時間なのに、もう働いているの?)

「クレア⋯⋯私が陛下の為にできることはないかしら? お疲れの毎日でしょうに、私は昨晩陛下にわがままを言ってしまったの。陛下の負担ではなく助けになれる女になりたいのよ」

 アレキサンダー皇帝の気持ちは全く分からない。
 彼は帝国の皇帝らしく表情管理が完璧だ。

 それでも、彼は側にいて欲しいと願った私の為に、部屋を出ようとしたのに戻ってきてくれた。
(本当に優しい方だわ⋯⋯)
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