元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

5.陛下⋯⋯泣いても良いのですよ。

 ふと、意識が戻ると背中が柔らかさを感じた。
 誰かが、私をベッドの上に運んでくれたようだ。

 体がだるい。
 目が開けられない。
 おそらくレイ・サンダース卿の投げたナイフにはマルネスの木の樹液が塗ってある。
 体中に痺れて、しまいには気管閉塞までおき呼吸が停止する毒だ。
 
 ナイフを受けたのが私でよかった。
 私はマルテーキーズ王国で使われる毒には耐性がある。
 母に言われて幼い頃から少しずつ摂取して、免疫をつけていたのだ。

 おそらくナイフを受けたのが、アレキサンダー皇帝だったら10分足らずで身体中に毒が回り亡くなっていただろう。
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