元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。


 陛下の弟君であるカイザー・バラルデール皇子は、まだ幼かったはずだ。
 陛下は、まだ子供である弟の誕生日は笑って迎えてあげようと考えているのだろう。

 それにしても、幼い子が舞踏会に出るなんてバラルデール帝国は私の祖国とは違う文化を持っている。

「今日は弟君に会えるのですね。楽しみです」
「そなたは今やっと目覚めたばかりだろう、まだ休んでおけ」
「嫌です」

 私が彼の言うことを聞かなかったからか、彼が私の表情を不思議そうにまじまじと見つめてきた。

「そもそも、ドレスをまだ作ってもいないだろう」
「何着か持ってきております。マルテキーズ王国から連れてきたメイドのルミナを呼んでください。しっかりと、支度して私も陛下のパートナーとして弟君の誕生日のお祝いがしたいです」

 彼の忠犬になるはずだったのに、やはり王女として育てられた我儘さも私は持っていた。
 私が出席したい会には当然出るつもりだ。
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