元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
舞踏会会場の扉の前には緑色の礼服を着た陛下がいた。
(しまった⋯⋯パートナーなのに色も合ってない⋯⋯)
何色を着るのか尋ねもしなかった自分の気の利かなさに、ため息が漏れそうになる。
「アレキサンダー・バラルデール皇帝陛下に、モニカ・マルキテーズがお目にかかります」
帝国では皇后になる人間だけ、バラルデールの姓を頂けるらしい。
ドレスを持ち上げて挨拶している間も、陛下は私をじっと見つめていた。
「今日はそなたのお披露目にもなるな。まだ、体調が完全に回復してないだろうから、開会のダンスを踊ったら下がると良い」
「分かりました」
確かに陛下の言う通り、まだ足元がふらついている。
頭もモヤがかかっていて、脳が正常に働いていない気がする。
(失言でもしたらまずいから、陛下の言う通りにした方が良さそうね)
それにしても、私の場違いな服装を指摘するのではなく、体調を気遣ってくれる陛下はとても親切な方だ。
「アレキサンダー・バラルデール皇帝陛下と、モニカ・マルキテーズ皇妃殿下のご入場です」
陛下にエスコートされて、舞踏会会場の中央まで来る。