元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。


「皇妃殿下、どうか貴方と踊る光栄な一時を私にください」

 無礼なことに私がカイザー皇子と話しているのに、口を挟んできた見知らぬ貴族の男がいた。

 オーケストラがまた演奏を始めだす。
(この誘いは流石に受けなくて良いよね? もっと、カイザー皇子と話したいわ)

「皇妃殿下、殿下に遠方より来客がいらっしゃっております。ご案内するので、どうぞこちらに⋯⋯」

 その時、銀髪に紫色の瞳をして紫色の礼服を着た目つきの鋭い貴族の青年が私の前に現れた。

 明らかに今までダンスをした貴族令息よりも高位の貴族だと一目で分かる。

「ジョージア・プルメル公子⋯⋯」
 私にダンスを誘ってきた男は現れた銀髪の男性を見て、逃げ出すようにそそくさと去っていく。

 プルメル公爵の息子、ジョージア・プルメル公子なら知っている。
 私の1つ年下で、帝国で最も力を持つ名門の公爵家の後継者だ。

 確かプルメル公爵家は代々帝国の宰相を輩出しているだけでなく、商売も手広くやっている。
 バラルデール帝国だけでなく、周辺諸国にも何件か宝飾品店を経営していると聞いたことがある。

 「じゃあ、行きましょうか。皇妃殿下」
 プルメル公子は柔らかく微笑むと、私をエスコートして会場の外に出た。
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