元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
「俺が必要なのは君だけだ。モモ、君を皇后にしようと思っている。結婚式も挙げよう」
「それは、難しいと思います。貴族の反対は避けられません⋯⋯」
私は不妊の可能性が高い上に、好戦的で警戒しなければいけないランサルト・マルテキーズ国王の娘だ。
「反対意見など、ねじ伏せて見せるさ。俺がどれだけ悪名高い暴君か知っているだろ」
彼が暴君と言われていたのは私が嫁ぐ前の話だ。
今の彼は理想の君主として、帝国民から愛されている。
「アレクは歴史に残る名君ですよ」
顔を上げてアレクの瞳を見ると、彼の瞳は潤んで宝石のように輝いていた。
「もし、俺がモモの言う通り名君なのだとしたら、愛しい君に釣り合うように行動した結果だ。俺は永遠にモモだけを愛し抜く」
そう言って、彼は私の頬を両手で包み込み口づけをしてきた。
彼の掛けてくれる言葉が、2度も捨てられた元捨て犬の私にとってどれほど嬉しいかを彼は知らないだろう。