元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
よく考えればマルテキーズ王国から帝国まで片道2ヶ月も掛かるのだから、父や兄がここまで来ていることはありえない。
「お気遣いありがとうございます。ジョージア・プルメル公子⋯⋯」
「僕のことはジョージとお呼びくだい。僕は皇妃殿下の臣下です」
私はとても温かい気持ちになった。
彼の父親のレイモンド・プルメル公爵は曲者だと聞いていたが、息子さんはお優しい方のようだ。
「ジョージ⋯⋯私のこともモニカと呼んでください。臣下だなんて⋯⋯私はバラルデール帝国のことは勉強不足で貴方から学びたいことが沢山あります」
「モニカ⋯⋯可愛い名前ですね」
「ありがとうございます」
急にジョージが私の言葉に吹き出したので、何事かと思った。
「申し訳ございません⋯⋯実は今日、モニカがありがとうございますを連発しているのが少しおかしくて⋯⋯」
「えっ? そんな⋯⋯恥ずかしいです」
私は「母がつけてくれた名前を褒められて嬉しい」と返せばよかったと後悔した。
それにしても、オーケストラの演奏の中ダンスをしている会話を聞かれているとは思わなかった。
(まさか、ジョージの前世も犬とか? 流石にそれを聞くのは失礼だわ)