元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
俺は彼に彼の母親エステラが俺の母タルシア・バラルデールに、毒を長期に渡り盛っていた事で処刑されたことを秘密にしていた。
いずれ真実を知られてしまうかもしれないが、5歳の子が背負うにはあまりに悲惨な出来事だ。
悪いのは彼の母親であって、カイザーには何の罪もない。
どうして、急に彼が皇位継承権を放棄するなどと宣言したのか理解できなかった。
(もしかして、今朝、俺の母上が死んだことを知ったんじゃ⋯⋯)
公にしていない情報が漏れて、その死因から自分の母親の罪を知った可能性がある。
俺の母が死んだことを知っているのは、現時点で皇宮医と俺だけだ。
(モニカ・マルテキーズにも話してしまったか⋯⋯)
本当は皇妃のことが心配で、1週間ほとんど意識が戻らない彼女に付き添っていた。
そのような中、急に母が息を引き取ったと情報が入った。
気持ちが酷く落ち込んで、つい目覚めた皇妃に弱音を吐いてしまった。
彼女は天使の顔をした悪魔で油断をしてはいけなかった。
俺は直ぐ様、休憩室に赴いた。
すると、まるで恋人のようにジョージア・プルメル公子と親密になっている皇妃がいた。
俺は気がつけば、思いつく限りの罵詈雑言を彼女に浴びせていた。
彼女が謝ってきたが、俺は許すつもりがなかった。
俺が彼女に心を許したせいで、大切な弟が傷つけられた。
休憩室を出たところで、カイザーと出会した。