元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
「カイザー、何であんなことを⋯⋯皇妃に何か言われたのか?」
「兄上、素敵な方を妻に迎えられましたね。皇妃殿下は僕が孤立していたら、側に来てくれてお祝いの言葉をかけてくれました。兄上、実は僕はずっと知っていたのです。僕の母上の罪を⋯⋯兄上は僕を想い真実を隠し続けてくれていましたよね。それでも、もう5歳になったのだから、自分でけじめをつけようと思っておりました」
(ずっと、知っていた?)
確かにカイザーの母親が処刑されて以来、彼はずっと孤立していた。
母親の罪があっても、幼さを理由にカイザーの皇子の身分は剥奪されなかった。
それでも、誰もカイザーのことを皇子として扱わなくなった。
そのような不自然な状況が続いていたのに、俺はどうして真実が隠し通せると浅はかなことを考えていたのだろう。
たった今、俺は頭に血がのぼって全てを勝手に皇妃のせいにして彼女を責めてしまった。
よく考えれば、皇妃は母の死因までは知らないはずだ。
(俺は彼女に何を言った?)
興奮状態で何を言ったか正しくは思い出せない。
彼女が俺を陥れようとしていたとしても、遠方から嫁いできた王女に浴びせる言葉ではなかったはずだ。
休憩室の扉が開き、ジョージア・プルメル公子が皇妃を愛おしそうに抱き上げているのが見えた。
まるで恋人同士のような姿にイラつくも、皇妃がぐったりしていて心配になる。
彼女の顔は血の気が引いていて、意識を失ったのが分かった。