元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

9.また捨てられてしまうかも⋯⋯。

 目を開けると陛下が心配そうに私のことを覗き見ていた。

 背中にベッドの柔らかさを感じて、周りを見渡すと自分の部屋だと分かる。
(私、倒れたの?)

「陛下、申し訳ございません。私が無理を言って出席させて頂いたのにご迷惑をお掛けしました」

「いや、俺の方こそ⋯⋯すまなかった」
 陛下は何に対して謝っているのだろう。
(雌犬とか、悪魔とか言われたような気がするけれど⋯⋯何がいけなかったのかしら⋯⋯)

「私の方こそバラルデール帝国について不勉強でした。ダンスの誘いは受けるべきではなかったのですね」

「いや、君は間違ってない⋯⋯俺が勝手にイライラしていただけだ」
 陛下はお母様を亡くされたばかりだ。

 私は部屋にいるように彼から言われたのに、自分の我儘を通した。
(こんな私では、また捨てられてしまうかも⋯⋯)

 私が落ち込んで黙りこくっていると、陛下が私の髪に手を伸ばして撫でてきた。
 私は昔から髪を撫でられのが好きで、思わず目を瞑りその優しい感触に身を委ねた。
(前世が犬だったからから、撫でられるのが気持ち良いのかも)
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