元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

10.側にいてください。(アレキサンダー視点)

「陛下、皇妃殿下が動きました」

 夜明け前に侍従が部屋に知らせに来たので、俺は皇妃が庭園の方に歩いて行ったと聞き庭園に向かった。

 昨晩、彼女の美しさに魅せられ皆が彼女と踊りたがっていた。
 ダンスの誘いがあれば、受けるのは当たり前なのに彼女に八つ当たりしてしまった。
 明らかに俺は彼女に心を占拠され始めていて、おかしな独占欲まで生まれている。
 彼女が一緒に食事をしたいなどと可愛いおねだりをしてきて、愛おしく思った。

 しかし、今度は夜明け前に皇城内を抜け出すと言う不審な真似をする。
 ただ、安心して愛させてくれれば良いのに、彼女に対する疑いは消えない。 

 庭園まで行くと話し声が聞こえた。
(間者と接触している?)

 近づいていくと、彼女はカイザーと会話をしていた。

 カイザーが俺にも言わないような本音を彼女に吐露していて驚いてしまう。
 モニカ・マルテキーズの前では男は何でも話してしまうと聞いていたが、5歳のカイザーも例外ではなかったようだ。
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