元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
11.私が少し会話すれば脳が溶けて、口を割ると思いますよ。(アレキサンダー視点)
「すぐに戻ってくるから」
「レンダース領の暴動は1年前にもありましたよね。もう、領主を切りませんか? 暴動はおさまりますよ。出兵による遠征費も節約できます」
俺は一瞬自分の耳を疑った。
そのような事は考えたこともない。
「レンダース領の領主カイゼル・レンダース伯爵は領主としての資質に欠けると思います。領地の争いで皇家に手間を掛けさせています。爵位と領地、財産を全て取り上げましょう。レンダース領を皇家直属領にするのです」
「そのような罰を与える理由がない⋯⋯」
俺は驚くような事を、天使のように微笑みながら語る皇妃に釘付けになった。
「報告書を過去10年分見せてください。叩いて埃の出ない貴族などいません。しかも、レンダース領にはサファイア鉱山があります。領民は3流でも土地は1流です。向こう5年は税を免除にすれば、領民は喜んで陛下に尻尾を振ります」
確かにしょっちゅう暴動で不満を訴える領民は3流だ。
対話という手段を選ぶことすら思いつかない蛮族と言えるだろう。
しかし、俺は蛇にまで優しい視線を向けていた彼女が、人を冷たく格付けし出したのが信じられなかった。