元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

12.実は皇妃の前だと何だか緊張してあまり上手い会話ができないんだ。(アレキサンダー視点)

 俺は自分がカイゼル・レンダース伯爵からの報告書には目を通すから、皇妃には何もしなくても良いと伝えた。

 彼女に言われた通り、報告書を確認するとおかしな点がすぐに沢山見つかる。

 領地からの報告書は全て行政部に確認を任せていた。

 俺は持ってこられた書類は問題のないものとして、サインをしていた。

 そもそも、数字のズレなど細かいことに目を向けるのが面倒だった。

 別に不正があっても、大した額ではないと思っていた。

 レンダース領にはサファイア鉱山があり、裕福になってもおかしくない土地だ。
 しかし、皇家へ度々支援を求め、その支援金はどこにいったのかも分からない。

 少しチェックしただけで疑問を感じるのに、誰も指摘しない。
(カイゼル・レンダースは行政部とも癒着しているのか⋯⋯)
 
 皇妃は書類をチェックしなくても、カイゼル・レンダース伯爵を資質のない領主だと言って放つ。

 俺は彼女を女の武器で男を翻弄してきた女だと思っていた。

 実際、彼女は一目で人の心を奪う程に美しい。

 求めるような目で常に見つめられている度に、彼女に溺れないように常に気をつけて自制をしなければならなかった。

 しかし、彼女の美貌は隠れ蓑で本当は優れた政治感で、マルキテーズ王国の為に暗躍してきたのではないかとの疑いが出てきた。
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