元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
「ひどいな⋯⋯」
「いえ、母君が毒殺された時に初めて彼女の愛情を知ったと言ってました」
「なるほどな⋯⋯自分は毒に耐性をつけて貰ったと感謝したという訳か」
「はい。でも、流石にバラルデール帝国由来の毒には耐性がないかもしれないと言ってました。スレラリ草のことですかね⋯⋯」
俺はカイザーがその後、何を話したのか全く頭に入ってこなかった。
(皇妃が俺がスレラリ草を盛ったことに気づいたかもしれない⋯⋯)
次に会った時に演技でも俺を求めるような目をしていた皇妃が、どんな目で俺を見てくるか想像にたやすかった。
皇妃と会話をして彼女のことをもっと知りたいのに、俺は彼女を避け続けてしまった。
彼女との食事の約束も反故にし、謁見要請も全て却下した。
彼女にこれ以上惹かれるのも、軽蔑や失望した視線を送られるのも怖かった。