元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
ジョージに指摘された通り、私はことある事に父の横顔を見つめていた。
父が自分と同じように母を失ったことを悲しんでくれなかった事が寂しかったからだ。
私がいなくなっても、そんな風に平気な顔をしているのかと思うと怖かった。
「ジョージ、そのような恥ずかしいところ見ていたことを白状するなんて酷いです⋯⋯」
「恥ずかしくないです。僕もずっと父に自分を見て欲しいと思ってました。苦しそうな表情をしているモニカの笑う所が見てみたいと4年間ずっと思っていました。そう言ったことを考えてしまうのが、一目惚れなんですか?」
「私に聞かないでください」
私は思わず吹き出してしまった。
確かに、彼は休憩室でも私を笑わそうとしてきた気がする。
「おかしな質問をしてきたので、私も変な質問をします。ジョージの前世は犬ですか?」
彼は確実に耳が良さそうだ。
オーケストラの演奏が響く中で私がした会話を知っていたり、人懐こい犬っぽさが隠せていない気がする。
「ふふっ、流石に犬ではないと思いますが」
「でも、私がダンスしている間の会話を聞いていましたよね」
「モニカのことが気になっていて、ダンスを終えた令息たちに会話の内容を聞きました」
私は思っていた以上に落ち込んだ。
前世は犬だという仲間がいたら、犬だった時の話もできたりして楽しいかと思ったのだ。
(それが、仲良くなれたジョージだったら最高だったのに⋯⋯)
「前世が犬だったらモニカの理想の男でしたか? もしそうであれば、これからはモニカの犬になりたいです」