元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

16.欲を満たしたいだけなら高級娼婦でも呼んでください。

 あれから2週間の時が経った。

 私はバラルデール帝国について、政治、経済、国際関係と只管に学んだ。
 全貴族の10年分の収支報告書にも細かくチェックを入れた。

 私は陛下とは全く会わない時を過ごしていた。
 もしかして、既に私は捨てられているのかもしれない。

 今晩もいつものように、ルミナが私の寝支度を整えてくれる。
 心なしかいつもより、硬く真剣そうな彼女を不思議に思った。

「ルミナ、今日、何かあった?」
「いえ⋯⋯その、今晩、アレキサンダー皇帝陛下がいらっしゃるようです」
 私は耳を疑った。

 陛下はこれだけ私を嫌うように避けているのに、房事には予定通り部屋を訪れてくるなど想像していなかった。

 後継ぎが欲しいのかもしれないけれど、おそらく私は不妊。
 
 定期的に来ていた月のものが今月は来なかった。

 私は自分の子供と手を繋いで散歩したりすることを夢見ている。

 生涯子供ができないかもしれないという現実を受け止める自信がなかった。それゆえに、皇宮医に正式な診断を受けるのは怖くて避けていた。
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