元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

17.私の方が年上なのに、子供扱いしないでください。

 今日は周りの同年代の子たちがどのような事に興味を持っているかを調査しに街に出て来た。

 お忍び用の紺色のローブを頭から被っているからか、余計に注目を集めてしまっている。
 しかし、護衛もつけずに、こっそり皇宮を抜け出して来たので見つかりたくない。

 バラルデール帝国のドレスや宝飾品の流行を追うのは大変そうだ。

 マルキテーズ王国は割と親から受け継いだものを長く使うことに価値を求める人間が多かった。

 それゆえ伝統的な細工をした宝飾品に価値があるという考え方があった。
 
 おそらくマルキテーズ王国から持ってきた宝飾品を身につけたら、バラルデール帝国では流行遅れと笑われそうだ。

 帝国の貴族令嬢は、髪飾り1つとっても先進的なデザインのものをつけている。

 バラルデール帝国は街中を歩くだけで、宝箱の中に入ったみたいにキラキラしている。
 世界中の富と権力がこの帝国に集まっているのが分かる。

 光り輝く世界に落ちた小人のような気分になり、街を歩くのは楽しいが店に入る勇気が全くない。

 私のドレスや宝飾品も6割が母から受け継いだもので、残りは贈り物で頂いたものだ。

 それゆえに、どのようなやり取りを店員とするのか分からない上に、正体がバレないかが怖かった。
 この間、皇宮にデザイナーの方が来て、色とデザインを選んでドレスや宝飾品を発注した。
 お店でも同じような感じのやり方で注文をするのかが確信が持てない。
 曖昧な状態で動くと失敗するので、ここは一旦引き下がった方が良いだろう。

 ドレスや宝飾品に限定せず、お茶の話ならできるかもしれない。
 それならば、既に知識を持っている。
 私は宝飾品店の前に立ち止まっていたが、諦めて帰ろうとした。

「モニカ、店には入らないのですか?」
 柔らかい風に乗ってくる私のたった1人の友人の声。
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