元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
おちょくるように言われて、思わず笑みが漏れた。
街を散策しながら、私はジョージに悩み相談にのってもらった。
「モニカは令嬢と自然な会話がしたいと言うけれど、令嬢たちのお茶会で自然体で楽しんでいる方はいませんよ。姉の開催するお茶会では皆、姉に適当に話を合わせているだけです。姉自身もお茶会の開催を面倒だと愚痴っていたりします」
ジョージの話は私には意外なものばかりだった。
「そのようなものなのですね。でも、陛下が私に他の貴族令嬢や貴族夫人との交流を求めている以上、お茶会は開催しなければなりません。私はジョージも見ていた通り交流目的で人と接するのが下手なのです」
私は、彼の姉のマリリン・プルメル公女の開催したお茶会で、マルキテーズ王国にいた時のように攻撃的に振る舞ってしまったのを恥じた。
「服や宝飾品に興味が持てないなら、香水とかはどうですか?」
「香水ですか? 私、鼻が良いので匂いが体にまとわりついたりするのが苦手なのです」
「鼻が良いって⋯⋯本当に面白いですね、モニカは。それなら、香水を調香とかできるんじゃないですか? 香水の店を開いてみてはどうでしょう」
なぜか話は商売の話にすり替わってて、私は思わず笑ってしまった。
酒場の前を通った時に、頭から濃い緑のローブを被った人が入ってくのが見えた。
その人からほのか香ってくる香りは私の知っているものだった。
「バラルデール帝国では昼から酒場が開いているのですか?」
ジョージは私の疑問に困ったのような顔をして、私の耳元に囁いた。
「あの店の奥には皇家御用達の暗殺ギルドがあるんです⋯⋯」