元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
そのような残酷な事をする方なのだろうか。
スレラリ草は陛下の母親を死に追いやった毒草だ。
(もし、それが真実なら、私は最初から捨てられているじゃない⋯⋯)
自分が陛下の役に立ちたい、親しくなりたいと過ごしていた日々を思い出すだけで痛々しい。
私は気がつけば、手を引かれてジョージに馬車に乗せられていた。
体を包み込む、彼の甘い柑橘系のコロンの香りに包まれる。
私はジョージに抱きしめられていた。
「泣かないで⋯⋯そこまで辛くて苦手なことをやらなくても、モニカは十分素敵な子ですよ」
私は泣いていたらしく、ジョージは私が泣いた理由を勘違いしている。
「私の方が年上なのに、子供扱いしないでください」
ジョージが私の頬に伝う涙を指で掬う。
王女として人前で泣いた事はない。
悔しい時、寂しい時はいつもシーツを被って、枕を噛んで泣いていた。
それでも、自分が既に新しい主人に捨てられたと思うと耐えきれず泣いてしまった。
「子供扱いなんてしていません。モニカ、君のことを愛する女性として扱ってますよ。僕の気持ちに気がつかないふりをしないでください。君を困らせるから一生伝えるつもりはありませんでした。でも、もう気持ちが抑えられません。以前にも伝えた通り君が今の場所から逃げたいなら、僕は君の犬として全てを捨てお供しますよ」
私は涙を止めようと目を瞑って彼の胸に顔を埋めた。
ジョージの気持ちは私にとっては困るものだ。
できれば、彼には一生気持ちを隠して友人でいて欲しかった。