元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

18.俺は君と離縁などしない。(アレキサンダー視点)

 俺は皇妃と食事の約束を反故にした事で、彼女に会い辛くなっていた。

 久しぶりに謁見申請してきたレイモンド・プルメル公爵の言葉は信じられないものだった。

「陛下、引退させてください。息子のジョージアに爵位を引き継いで、妻と娘と領地に戻ろうと思います」

 野心家で若い頃から活躍してきた彼が30代で引退すると言っている。
 そして、ジョージア・プルメル公子はまだ未成年な上に政治より商売に興味があるように見えた。
 レイモンド・プルメル公爵が早くして息子に爵位を引き継ぐのは不自然だ。

 俺はいつも公爵の動きに警戒していたし、引退してくれるのであれば気楽になるが流石に不自然だ。

 彼が引退すると言って来たのは、皇妃がプルメル公爵家でお茶会をした翌日だった。

 報告によるとお茶会の後、外に停めた馬車の中で皇妃はジョージア・プルメルと密会していたらしい。

 俺は皇妃がジョージア・プルメル公子と通じている気がして、気が気じゃなかった。

 そして、レイモンド・プルメル公爵に寄生していたミレーゼ子爵をはじめとする貴族派の連中が俺に擦り寄ってくるようになった。

 俺は自分の周りの不自然な変化に、皇妃の影を感じていた。
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