元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
俺の心は父を殺された復讐心よりも、俺を裏切った皇妃の心を傷つけてやりたいという気持ちに支配されていた。
初めて恋のような気持ちを抱き、彼女と会う時はいつも緊張した。
彼女は勘違いするような眼差しで見つめてきて誘惑してきた癖に、今は新しい恋人を作り俺を捨てた。
裁判を異例の早さで行い、俺は次の週にはプルメル公爵家の一族を断頭台で処刑した。
皇妃をバルコニーに置いたベロアソファーに座らせる。
帝国に来てから何着か彼女はドレスを作った。
そのうちの1着だろう薄紫色のドレスを着た彼女は、いつもより色っぽく見えた。
彼女は淡い色が好きなのだろう、そして自分の魅力を引き出すのがとても上手だ。
バラルデール帝国で流行している派手な緑色のドレスを彼女にプレゼントしたが、気に入らなかったのか着ているのを見たことがない。
俺はわざと彼女に、見下ろすようにプルメル公爵家一族の処刑を見せた。
総勢、36名のプルメル公爵家一族が汚れた布を頭から被せられ、手を後ろ手にされて列をなして登場する。
そこには帝国一の名門貴族の威厳はない。
いるのは畜生にも等しい罪人たちだ。
「皇妃、断頭台での処刑を見るのは初めてだろう」
マルテキーズ王国での処刑は王と側近のみが立ち合い、首を斧で落とすと聞いた。
バラルデール帝国の処刑は違う。
罪人は見せ物として、幼い子供までに罵倒されながら首を落とされる。
大衆は日頃の鬱憤を発散させるように、罪人に罵詈雑言を浴びせかけた。
俺は皇妃が俺を裏切って選んだ男が、罪人として首を切られるところ見せるつもりだ。
彼女は裏で暗躍しても、人が首を切られるのを見るのは初めてだろう。
おそらく彼女は怖がり、俺に擦り寄ってくるかもしれない。
俺がこの世界で自由にできない命などないということを分からせてやろうと思った。
「ええ、初めてです。陛下がお父様の仇が取れたこと大変喜ばしく思います」
見惚れるほど優雅に彼女は笑っていた。
俺はまた彼女が分からなくなった。
ジョージア・プルメル公子と彼女が恋仲だというのは俺の誤解だったのだろうか。
俺が2人の仲に疑いを深めたのは、彼らが4年前にも会っていた可能性があったからでもある。
プルメル公爵家はレントル王国と交流があり、ジョージア・プルメル公子はレントル王国の建国祭に出席していた。
レントル王国の建国祭に現れた14歳のモニカ・マルテキーズの暗躍で、マルテキーズ王国がレントル王国を滅ぼしたことから彼女が「魔性の悪女」と呼ばれるようになった。
ジョージア・プルメル公子と皇妃は初めから親密に見えた。
しかし、皇妃が笑いながら公子の首が落ちるのを見ているということは恋人同士ではなかったということだろうか。
「陛下、私と離縁してください」