元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。
ふと耳に入ってきた彼女の澄んだ声に、俺は心臓が止まりそうになった。
周囲の声がうるさくて、彼女の声が聞き取りづらい。
場所を改めて彼女と話し合いたいのに、プルメル公爵家一族の処刑は続いている。
刑の執行の合図をし、処刑を見届けなければいけない俺が席を離れるわけにはいかない。
「俺は君と離縁などしない。なぜだ? やはり、ジョージア・プルメル公子と通じていたのか?」
「そのような事実はありませんが、陛下がそう思われるなら、不貞の罪で廃妃にしてください」
彼女は口元に笑みを湛えて天使のような顔をして、俺の心を地獄に堕としていく。
「モニカ、君はいつも何を考えているのだ? マルテキーズ王国に戻るのか?」
俺は気がつけば彼女を名前で呼んでいた。
本当はずっと彼女を名前で呼びたかった。
ジョージア・プルメル公子が「モニカ」と彼女を呼んでいるのを聞いて、嫉妬に狂いそうになったのを思い出した。
「私はマルテキーズ王国から捨てられた身ですよ。戻るわけないじゃないですか。でも、陛下も私のことを最初から捨ててたのですね。もう、一緒にはいられません」
彼女は何を言っているのだろう。
俺は1日中彼女のことを考えていて、彼女に囚われている。