元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。

19.私は彼を捨てて、生きていく。

 私は予定通りアレキサンダー皇帝に離縁を申し出て、部屋に戻った。

 ナイフで髪を肩まで切ると、さっぱりした気分になった。

(ちょうど、暖かい季節になるし良いかもしれない)

 ルミナは私についてきてくれると言ったが、どうなるか分からない私の人生に彼女を巻き込むのは憚られた。

 彼女にはマルテキーズ王国に戻るように伝えた。

 貧しい生活を強いられるかもしれない新しい人生でもワクワクするのは、私の前世が犬だからかもしれない。

 人間であるならば言葉が使えるから、いくらでも道が開ける気がした。

 ジョージのアドバイス通り、調香師などになり香水屋などの商売を初めてみようかと考えていた。

 私の正体がバレると色々面倒そうだと思ったので、ふとジョージからもらったウィッグを持ってこうかと思った。

 クローゼットの奥に入れたウィッグをよく見ると、アメジストのピンがついている。
(結局、勝手にプレゼントしてきたのね。ジョージ⋯⋯)
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