元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。


 プルメル公爵家一族の処刑される日を私のコントロール下に置くためだ。
 そうすれば、ジョージだけは逃すことができる。

 私が逃げるならば、犬としてお供したいと伝えてきたジョージに私は提案をした。

「ジョージ、皇族の暗殺は一族だけでなく、末代まで裁かれる大きな罪です。しかも、貴方のお父様のやり方が下手くそ過ぎて真実が露見するのも時間の問題です。貴方は私にとって唯一の友人なのです。貴方だけ助ける手段を選ばせてください」

 私の言葉に目を白黒させているジョージは考えが甘い。

 レイモンド・プルメル公爵を領地に追いやれば、陛下が溜飲を下げるとでも思っているのだろう。

 そして、レイモンド・プルメル公爵は保守的な先皇陛下より、しょっちゅう城を留守にするアレキサンダー皇帝の方が扱いやすいと勘違いしている。
 
「これから、暗殺事件に関係している皇宮医に真相を暴露させます」
「今まで口をつぐんでいたのに、彼が証言するわけがありません」
「私に真相を掴まれたと思ったジョージは、口を割ったじゃないですか。該当の皇宮医には妻と生まれたばかりの子がいるんです。家族と離縁し妻と子は私の方で守るように伝えます。本来なら妻子とも処刑対象ですから、私の言うことを聞くと思いますよ」

 私が怖くなってきたのか、先程まで私を守りにきた王子のような顔をしていたジョージは青い顔をしている。
(綺麗な生物には大抵毒があるって、知らなかったのかしら⋯⋯)

「プルメル公爵家一族は全員処刑されるのですよね⋯⋯父上も、母上も、姉上も⋯⋯」
「それだけの罪を犯したって理解してますか? 皇族殺しですよ。バラルデール帝国を乗っ取ろうだのと不相応な野望を抱いたお父様を戒めなかった⋯⋯ジョージにも責任はあること自覚してください」

 ジョージは黙り込んで俯いてしまった。
 レイモンド・プルメル公爵は息子を溺愛していると聞いた。
(絶望を味わったこともない⋯⋯愛されて甘やかされてきた男⋯⋯)
 私はそのような自分と真逆のキラキラした友人に魅力を感じていた。

「今から、私は暗殺ギルドに行ってきます。貴方の代わりになる死体も用意しましますし、貴方は私に言われた通りに姿を消してください。ただのジョージアとして今後は暮らしていくのです」
< 99 / 159 >

この作品をシェア

pagetop