君の代わりに恋をする
第6話 受け取ったらいいじゃん
「あ、これチーズ入ってるんだ。やっぱり見てるだけじゃわからないね」
「進藤くんお昼ご飯食べてないの?」
「おにぎり食べたよ」
「お弁当食べる必要ある?」
「あるから食べてるんだよ」
ちょっと納得いかないけど、ちゃんと美味しそうに食べてくれている。
進藤くんに美味しいって言わせようと気合いいれたんだよね。大崎くんも『めっちゃ美味しかった!』ってすごく褒めてくれたし。
あれ? 私なんのためにこんな頑張って作ったんだろ。
「この生姜焼きの肉柔らかいね。何かしてるの?」
「ああ、それは昨日からすりおろした玉ねぎにつけておいたんだよね。味つけもしておいたから朝は焼くだけでいいの」
「よく料理するの?」
「うち、お父さんしかいないから大体は私が作ってるかな。休みの日はお父さんも作ってくれるけど」
「大変じゃない?」
「慣れるまでは大変だったけど、好きだし、今は楽しいよ」
「楽しいんだ。だから料理、上手なんだね」
「え……あり、がとう」
進藤くんに褒められると変な感じする。
「僕も……作ってみようかな」
「え?!」
「あ、いや。なんか、大崎が美味しい美味しいって嬉しそうに食べてたし、作ってみてもいいかなって思って……。でも、やったことないし、たぶん無理だからやめとく」
「無理なんてことないよ。やったことないならやってみたらいいんだよ!」
「まあ……考えとく」
好きな人にお弁当作ってあげたいなんて進藤くんも可愛いな。
それに少しずつ、本当の進藤くんが見えてきた気がする。
はじめは何を考えてるかわからない、掴みどころのない変な人だなって思ってたけどそんなことない。
繊細で、ちょっと可愛くて、でも意地悪で、一途な人。
「佐倉さん、僕玉子焼きは甘いのよりしょっぱいのが好きなんだけど」
「進藤くんの好みなんて知らないよ!」
あと、図々しいも付け足しとこう。
「そうだ、お礼渡さないとね」
「ほんとにお礼あるんだ……」
進藤くんは鞄の中に手を入れる。
お礼なのに、なにを渡されるのか不安なのはなぜだろう。
「はい、これ。いらないからあげる」
お礼にいらないものをあげるってやっぱり――
「うそおおおおおおおお!」
「うるさいよ佐倉さん」
「ななななんでこれを?! どこで手に入れたの?!」
これは大人気BL漫画『星クズ』の限定クリアファイル!
指定のペットボトル飲料三本以上買うと貰えるものだが、キャンペーン初日に近所のコンビニをひたすら回っても手に入れられなかったのに!!
「お茶三つ買ったらレジでいりますかって言われたからもらっといた」
「進藤くん! これはむしろもらえません!」
「なんでだよ」
「これがどれだけ貴重かわかってないね。そもそもBLは市場ではまあそんなに人気なジャンルじゃないけどそれでも『星クズ』はシリーズ売上百万部超えたヒット作でこうやってキャンペーングッズにもなるくらいでそれが全く手に入らないくらい根強いファンもたくさんいてその中で進藤くんがこれを手に入れられたのはもう奇跡でその奇跡を安易に手放すなんてしちゃだめだよ!」
はあ、はあ、はあー。
ちょっと勢いよく話し過ぎてしまったかも。
でも、こんなに熱く語ったというのに進藤くんは興味なさげだ。
「よくわからなかったけど、いらないならもう捨て――」
「絶対だめーーーーーーーー!」
「うるさいなぁ。だったら受け取ったらいいじゃん」
「いただきます。そうさせていただきます」
私は頭を下げながら、両手で丁重に受け取った。
ああ。嬉しい嬉しい嬉しい。
さっきは強がってもらえないとか言ったけど、めちゃくちゃ嬉しい。
「顔がニヤついてるよ」
「え……」
いけない。たぶんそうとう顔が緩んでいるはずだ。
人前でこんな顔するなんて今まで絶対なかったのに。
なぜか進藤くんの前だと素がでてしまう。
「とにかく、本当にありがとう! 家宝にするよ」
「家宝は言い過ぎでしょ」
「確かにそれは言い過ぎた。でもそれくらい嬉しいってことだよ」
私はもらったクリアファイルを自分のクリアファイルに挟み、大事に鞄にしまった。
◇ ◇ ◇
「えー、明日は待ちに待った遠足です。前にも言いましたが特に集団行動はしないので到着したら集合写真を撮って自由行動、時間になったら集合です。では明日バスの時間があるので遅れずに来てください。以上です」
ホームルームが終わり、担任が出ていくと裕子がすぐに後ろを振り返ってくる。
そして大崎くんにも目を向ける。
「ねえ葉月、明日一緒に回るっていったじゃん?」
「うん。楽しみだね」
「大崎と回らなくていいの?」
「あ……」
隣の大崎くんをちらりと見る。彼もこちらを見ていたのか、目が合う。
裕子と約束したのはまだ付き合いはじめる前で、なにも考えてなかったけど、やっぱり彼氏と一緒に回るのが普通なのかな?
「私はいいから葉月、大崎と回りなよ」
「え、でも……」
裕子なら他にも一緒に回るくらいのクラスメイトはいるだろうけど、こんな急には難しいだろうし、なによりずっと前から約束してた裕子と回りたい。
「いや、俺はいいよ」
「でも大崎は葉月と回りたいでしょ」
「それはまあ、一緒に回れたら嬉しいけど……」
「ほら、だったら」
「さ、三人で回らない?!」
「いやだわ!」
裕子はすかさず突っ込んでくる。そりゃそうか。私も裕子と幸人先輩の間に入れって言われたらいやだし。
「あのさ、もし二人がよければ蓮も誘って四人で回らない? 二:二ならいいかなって」
「まあ、それならいいかも」
進藤くんか。二人でいるときの彼に慣れてしまって、変な態度を取らないかなんか不安だ。
でも裕子と大崎くんはそれで納得してるし、大崎くんがいるならどっちみち付いてくるだろうし。
こうなったら四人で回るのが一番最善だよね。
「じゃあ、そうしよっか」
ちょっと予想外のメンバーになってしまったけど、明日の遠足楽しもう。
「進藤くんお昼ご飯食べてないの?」
「おにぎり食べたよ」
「お弁当食べる必要ある?」
「あるから食べてるんだよ」
ちょっと納得いかないけど、ちゃんと美味しそうに食べてくれている。
進藤くんに美味しいって言わせようと気合いいれたんだよね。大崎くんも『めっちゃ美味しかった!』ってすごく褒めてくれたし。
あれ? 私なんのためにこんな頑張って作ったんだろ。
「この生姜焼きの肉柔らかいね。何かしてるの?」
「ああ、それは昨日からすりおろした玉ねぎにつけておいたんだよね。味つけもしておいたから朝は焼くだけでいいの」
「よく料理するの?」
「うち、お父さんしかいないから大体は私が作ってるかな。休みの日はお父さんも作ってくれるけど」
「大変じゃない?」
「慣れるまでは大変だったけど、好きだし、今は楽しいよ」
「楽しいんだ。だから料理、上手なんだね」
「え……あり、がとう」
進藤くんに褒められると変な感じする。
「僕も……作ってみようかな」
「え?!」
「あ、いや。なんか、大崎が美味しい美味しいって嬉しそうに食べてたし、作ってみてもいいかなって思って……。でも、やったことないし、たぶん無理だからやめとく」
「無理なんてことないよ。やったことないならやってみたらいいんだよ!」
「まあ……考えとく」
好きな人にお弁当作ってあげたいなんて進藤くんも可愛いな。
それに少しずつ、本当の進藤くんが見えてきた気がする。
はじめは何を考えてるかわからない、掴みどころのない変な人だなって思ってたけどそんなことない。
繊細で、ちょっと可愛くて、でも意地悪で、一途な人。
「佐倉さん、僕玉子焼きは甘いのよりしょっぱいのが好きなんだけど」
「進藤くんの好みなんて知らないよ!」
あと、図々しいも付け足しとこう。
「そうだ、お礼渡さないとね」
「ほんとにお礼あるんだ……」
進藤くんは鞄の中に手を入れる。
お礼なのに、なにを渡されるのか不安なのはなぜだろう。
「はい、これ。いらないからあげる」
お礼にいらないものをあげるってやっぱり――
「うそおおおおおおおお!」
「うるさいよ佐倉さん」
「ななななんでこれを?! どこで手に入れたの?!」
これは大人気BL漫画『星クズ』の限定クリアファイル!
指定のペットボトル飲料三本以上買うと貰えるものだが、キャンペーン初日に近所のコンビニをひたすら回っても手に入れられなかったのに!!
「お茶三つ買ったらレジでいりますかって言われたからもらっといた」
「進藤くん! これはむしろもらえません!」
「なんでだよ」
「これがどれだけ貴重かわかってないね。そもそもBLは市場ではまあそんなに人気なジャンルじゃないけどそれでも『星クズ』はシリーズ売上百万部超えたヒット作でこうやってキャンペーングッズにもなるくらいでそれが全く手に入らないくらい根強いファンもたくさんいてその中で進藤くんがこれを手に入れられたのはもう奇跡でその奇跡を安易に手放すなんてしちゃだめだよ!」
はあ、はあ、はあー。
ちょっと勢いよく話し過ぎてしまったかも。
でも、こんなに熱く語ったというのに進藤くんは興味なさげだ。
「よくわからなかったけど、いらないならもう捨て――」
「絶対だめーーーーーーーー!」
「うるさいなぁ。だったら受け取ったらいいじゃん」
「いただきます。そうさせていただきます」
私は頭を下げながら、両手で丁重に受け取った。
ああ。嬉しい嬉しい嬉しい。
さっきは強がってもらえないとか言ったけど、めちゃくちゃ嬉しい。
「顔がニヤついてるよ」
「え……」
いけない。たぶんそうとう顔が緩んでいるはずだ。
人前でこんな顔するなんて今まで絶対なかったのに。
なぜか進藤くんの前だと素がでてしまう。
「とにかく、本当にありがとう! 家宝にするよ」
「家宝は言い過ぎでしょ」
「確かにそれは言い過ぎた。でもそれくらい嬉しいってことだよ」
私はもらったクリアファイルを自分のクリアファイルに挟み、大事に鞄にしまった。
◇ ◇ ◇
「えー、明日は待ちに待った遠足です。前にも言いましたが特に集団行動はしないので到着したら集合写真を撮って自由行動、時間になったら集合です。では明日バスの時間があるので遅れずに来てください。以上です」
ホームルームが終わり、担任が出ていくと裕子がすぐに後ろを振り返ってくる。
そして大崎くんにも目を向ける。
「ねえ葉月、明日一緒に回るっていったじゃん?」
「うん。楽しみだね」
「大崎と回らなくていいの?」
「あ……」
隣の大崎くんをちらりと見る。彼もこちらを見ていたのか、目が合う。
裕子と約束したのはまだ付き合いはじめる前で、なにも考えてなかったけど、やっぱり彼氏と一緒に回るのが普通なのかな?
「私はいいから葉月、大崎と回りなよ」
「え、でも……」
裕子なら他にも一緒に回るくらいのクラスメイトはいるだろうけど、こんな急には難しいだろうし、なによりずっと前から約束してた裕子と回りたい。
「いや、俺はいいよ」
「でも大崎は葉月と回りたいでしょ」
「それはまあ、一緒に回れたら嬉しいけど……」
「ほら、だったら」
「さ、三人で回らない?!」
「いやだわ!」
裕子はすかさず突っ込んでくる。そりゃそうか。私も裕子と幸人先輩の間に入れって言われたらいやだし。
「あのさ、もし二人がよければ蓮も誘って四人で回らない? 二:二ならいいかなって」
「まあ、それならいいかも」
進藤くんか。二人でいるときの彼に慣れてしまって、変な態度を取らないかなんか不安だ。
でも裕子と大崎くんはそれで納得してるし、大崎くんがいるならどっちみち付いてくるだろうし。
こうなったら四人で回るのが一番最善だよね。
「じゃあ、そうしよっか」
ちょっと予想外のメンバーになってしまったけど、明日の遠足楽しもう。