夕暮れのオレンジ

「今時そんな告白する奴いるの? ていうか結婚を前提にとか重くない? 学生じゃないってこと?」
「…」
「わかったわかった、だまって聞くから続けて続けてよ」

 気分が最悪だったオレは荒んだ心で思った。公共の場でそんな大声で何言ってるんだ。しかしよく考えるとその声は少年の声だった。今時の子供は言うこと違うなと視線をずらせば、そこには大小の影が。

 黒いランドセル背負った少年がうちの高校の制服を着た女子高生相手に告白してた。

「年上好きか少年!!」
「…」
「俺とうまい酒が飲めそ…イタイイタイ何すんだよ蹴るなよ! 脛は誰だって弱点だろやめろよ!」

 オレは衝撃に固まった。確かに年上に憧れる時期はある。しかし小学高学年くらいの少年がしっかりとした口調で女子高生を口説いているとは驚きだった。しかも結婚を前提にだ。どんだけませてるんだ今時の小学生。
 少年は今もなお言い募っていた。どうやらその告白が初めてではないらしく、そろそろ返事が欲しいと要求していた。何回も告白するとかどんだけ根性があるんだ。若いって素晴らしい。そう思っていたオレは呆然と立ち尽くしたまま、彼らの会話を立ち聞きしていた。
 そして女子高生は、ちょっと困った顔で微笑んで、言った。

「ごめんなさいね、私…真由美じゃないとときめかないの」








 惚れた。

「なんで!?」
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