お見合いの場で「おまえは好みではない」と言われた令嬢の攻防戦
本編
 十七歳になったキャスリンはこれから婚約するかもしれない男性と初顔合わせをする。つまり、お見合いのようなものだ。しかも相手はこのソクラス国の第二王子、アーノルドである。
 第二王子は国の経済の先を読む力に長け、国王や兄王子からも一目置かれる存在だ。
 ソクラス国の財務状況を担っているのは、まだ二十歳にもならないこの第二王子だとも言われている。そういった賛辞を集めているのに、社交の場には一切姿を現さない。
 そのため幻の王子とも呼ばれているのだが、なぜか社交界における彼の評判はよろしくない。
 どこどこの令嬢を弄んだだの、どこどこの令嬢を脅しただの、どこどこの令嬢を……と女性に対する変な噂が絶えない男なのだ。
 そんな彼と噂になった令嬢に話を聞こうとすれば「あんな男、思い出したくもない」とでも言うかのように口をつぐみ、震え始める。それほどまで拒絶されてしまえば、それ以上の話は聞き出せそうにない。それは彼女たちの心の傷をえぐるような行為に該当する。
 だから、彼の悪い噂を払拭してくれるような人物は誰一人いない。いや、このような状況を見せつけられれば、令嬢たちに同情が集まり、アーノルドの悪評は高まるばかり。
 いくら頭脳はよくても性格が……という話は社交の場に瞬く間に広がり、彼を擁護する一派と彼を心よく思っていない一派に分かれている。もちろん擁護する派は彼の能力を買っており、よく思っていない派は彼の女癖の悪さを嘆いている。
 そんな男性とキャスリンは婚約する、かもしれない。それをかけて、これから顔を合わせるのだ。
< 1 / 24 >

この作品をシェア

pagetop