お見合いの場で「おまえは好みではない」と言われた令嬢の攻防戦
 キャスリンは北の辺境を治めるセリーナ辺境伯の娘。北の大地に住む彼女の肌は雪のように白い。漆黒の髪は腰まで真っすぐに伸びており、煌々とした太陽の光によって艶やかに輝いている。ふっくらとした唇は愛らしく、宝石を思わせるような碧眼。
 レースがふんだんにあしらわれている薄紅色のドレスは、彼女の愛らしさをいっそう際立たせる。
 アーノルドが幻の王子と呼ばれているなら、キャスリンだって幻の雪の妖精姫と言われていた。
 それは、彼女が北の辺境から滅多に出てこないからだ。社交の場に顔を出したのはキャスリンのデビュタントのときのみ。会場にいた男性は、その愛らしい姿に目を奪われた。
 しかし大柄な辺境伯が常にキャスリンの側に張り付いていたため、彼女をダンスに誘えた男はいない。
 またそれとなく彼女に求婚する者もいたようだが、その縁談は彼女の父親であるセリーナ辺境伯によって粉々に握り潰されている。
 だからセリーナ辺境伯は、娘を溺愛しておりどこにも嫁がせたくないのだという噂も社交界には広がっていた。それも相成って、彼女は幻の雪の妖精姫と呼ばれているのだ。
 そんな能力と悪評が高い王子と、幻の雪の妖精姫。
< 2 / 24 >

この作品をシェア

pagetop