お見合いの場で「おまえは好みではない」と言われた令嬢の攻防戦
二人の初顔合わせとして選ばれた場所は王城の庭園にある円筒形の屋根が可愛らしい東屋。色とりどりの花に囲まれ爽やかな風を受ければ、自然と話もはずむだろうと、彼らを取り巻く人たちはそう考えたようだ。
「お初にお目にかかります。キャスリン・セリーナでございます」
手本のような完璧な挨拶をこなした彼女を、真っ黒いフードと仮面で顔を覆った男がジロリと睨みつける。仮面から見える紫眼だけが、唯一わかる彼の特徴。こういった華やかな場でありながらも、彼は仮面をとろうとはしない。その仮面の男がアーノルドである。
彼はすでに席についており、白い丸テーブルに肘をついてキャスリンに鋭い視線を向け続ける。
キャスリンは決して時間に遅れたわけではない。だから、このように威嚇される心あたりなどまったくない。となれば、彼はキャスリンの存在そのものが気に食わないのだろう。
仮面越しだというのに、そんな雰囲気をひしひしと感じとった。
「俺がアーノルド・ソクラス。おまえもかわいそうな女だな。俺と婚約、つまり結婚しろと言われたわけだろ?」
もちろん、アーノルドは自己紹介をする間も仮面を外さなかった。素顔を見られては困る理由があるのだろうか。
「かわいそう? わたくしはかわいそうではありませんわ。この縁談を受けたのはわたくしの意思ですから」
小首を傾け、小鳥がさえずるような声でキャスリンはそう言った。
「お初にお目にかかります。キャスリン・セリーナでございます」
手本のような完璧な挨拶をこなした彼女を、真っ黒いフードと仮面で顔を覆った男がジロリと睨みつける。仮面から見える紫眼だけが、唯一わかる彼の特徴。こういった華やかな場でありながらも、彼は仮面をとろうとはしない。その仮面の男がアーノルドである。
彼はすでに席についており、白い丸テーブルに肘をついてキャスリンに鋭い視線を向け続ける。
キャスリンは決して時間に遅れたわけではない。だから、このように威嚇される心あたりなどまったくない。となれば、彼はキャスリンの存在そのものが気に食わないのだろう。
仮面越しだというのに、そんな雰囲気をひしひしと感じとった。
「俺がアーノルド・ソクラス。おまえもかわいそうな女だな。俺と婚約、つまり結婚しろと言われたわけだろ?」
もちろん、アーノルドは自己紹介をする間も仮面を外さなかった。素顔を見られては困る理由があるのだろうか。
「かわいそう? わたくしはかわいそうではありませんわ。この縁談を受けたのはわたくしの意思ですから」
小首を傾け、小鳥がさえずるような声でキャスリンはそう言った。