お見合いの場で「おまえは好みではない」と言われた令嬢の攻防戦
「好きにしろ」
 拒絶されなかっただけ、よかったのかもしれない。
「失礼いたします」
 キャスリンが白い可愛らしい椅子に座ろうとすると、どこからともなく侍女がやってきて椅子をひいてくれた。ふわふわとしたスカートであるため、介添えしてくれるのは助かる。
 侍女は二人の前にお茶とお菓子が並んだスタンドをおいていき、どこかに消えた。
「人払いしてある。俺への暴言を好きなだけ吐くといい」
「まぁ、暴言だなんて。わたくしがアーノルド殿下に暴言を吐く理由はございません」
「今はなくとも、これからあるかもしれないだろう? この縁談、セリーナ辺境伯の狙いは金か?」
 アーノルドがそう思っても仕方あるまい。何よりもアーノルドが国庫の実権を握っているのではと、まことしやかに囁かれている。
「いいえ。国のお金には興味はございません。殿下が思っているよりも、我がセリーナ領は潤っておりますの。殿下に嫌われたらセリーナ領の独立を父に進言いたします。それくらいの資産はありますから」
「それは脅しか?」
< 5 / 24 >

この作品をシェア

pagetop