復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「それはご両親の写真か?」

 私の真向かいに座っていた彼は、隣のリビングにある両親の写真に気づいたのか、ふと椅子から立ち上がった。一昨日沢山お花を買ってきたので、写真の前にはダリアやピンポンマム、ケイトウなど色とりどりの花が花瓶にいけてある。

 「はい。父と母の若い頃の写真です」

 彼は両親の写真の前まで歩いて行くと、真摯な面持ちで手を合わせた。何を話しているのか、彼は目を閉じたまましばらくの間じっとその場に佇んでいる。

 「父と母に何を話したんですか?」
 「柏木が言ったことと同じような事だろうな」

 そうニヤリと笑う彼に、私はスッと目を細めた。

 「柏木常務が以前から結愛のことを好きだったの知ってたんですか?」
 「さぁ、どうだろうな」

 訝しげに尋ねる私に、彼はさらに口角を持ち上げる。彼のやることは何でも徹底している。この彼に偶然なんてことはあり得ない。きっと結愛に柏木商事での仕事を紹介する前から、常務と結愛のことを知っていたに違いない。


 「もう熱はないようだな。喉は痛くないか?」

 お粥を食べ終わった後、キッチンで二人でお皿を片付けていると彼は再び私の額に触れた。朝に薬を飲んだきりであれからかなりの時間が経っている。もう熱がないところをみるとすでに回復したのだろう。

 頭もスッキリしているし、ご飯も普通に食べれたし、すっかり元どおりだ。風邪をひいていたというよりも、ここ最近いろいろとあったのでただ単に疲れていただけなのかもしれない。
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