復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜

　「よし。まずはゆっくり滑ってみよう。滑るときはどうするか覚えてるか？」
　「うん。足を閉じるんだよね」

　そうしてスキー板を斜面に垂直になるように立つと、足を閉じてゆっくりと斜面を滑り出した。でも思ったよりもスピードが出てしまい、慌ててブレーキをかけようとスキー板を八の字にしようと足に力を入れた。

　「ぎゃぁ〜、止まんない！！」
　「エッジをきかせろ」

　でも結局スキー板の先を閉じすぎて、板が交差してしまいバランスを失って転けてしまう。む、難しい……

　「ほら、大丈夫か？」
　「うん……」

　ここは初心者用のコースなので斜面の傾斜も緩やかで、私のように初心者やレッスンを受けている小さな子供たちが沢山滑っている。でも子供達はバランス感覚がいいのかスラスラといとも簡単に滑っていく。そんな子供達を羨ましげに横目で見ながら、彼に支えられて立ち上がった。

　「よし、もう一度やってみよう」
　「うん」

　そうして再び同じように滑り始める。

　「まっすぐ滑るとスピードが出てしまう。だからジグザグにターンをしながら滑るんだ。ほら、こんな風に」

　崇人さんは難なく右へ左へとターンをする。見ているとすごく簡単なのに、実際にやるとすごく難しい。それとも私が単に運動神経が悪いだけなのだろうか。

　「右だ、右。右にターンしろ。そっちは左だ。木にぶつかるぞ」

　「そんなこと言ったって、右に曲がろうとしてるんだけど、曲がらないんだもん！」

　彼に言われた通りスキー板をVの字に動かすけど、それでも思うように曲がらない。

　「重心をもっと動かすんだ。右に曲がりたいときは右に重心を動かしてみろ」

　彼は教え方も上手だけどかなりのスパルタ。一時間後、違うコースに行こうということになり、リフトに連れていかれる。