復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「えっ、ちょっと待って。リフトからどうやって降りるの!?」

 乗るときも一苦労だったが、目前に迫ったリフトの降り場に焦ってしまう。

 「俺がちゃんとタイミングを教えてやるから。合図を送ったら立ち上がるんだ」

 降り場にくると彼は私の腕を掴んでリフトから降りる。私も一緒になって立ち上がるものの、滑ってバランスを崩して転けてしまいそうになる。

 (ひえぇぇ!!)

 「大丈夫。俺が支えてるから。ほらブレーキをかけろ」

 彼にガッチリと支えられて、何とかリフトの降り場から離れる。後ろからは次々とリフトから降りた人たちが私達の前を通り過ぎて行く。

 (何だかリフトの乗り降りだけでめちゃくちゃ疲れた……)

 ぜぇはぁと乱れた息を整えながらふと顔を上げると、先ほどとは違う標高のすこし高い場所で、見下ろす雪山の綺麗な景色が見える。今朝は空には青空が広がっていて真っ白な雪景色は息を呑むような絶景だ。

 「わぁ……すごく綺麗……」

 思わずゴーグルを外してそんな絶景を眺める。私の隣に立った彼も同じようにゴーグルを外して目の前の景色を眺めた。

 「君にこれを見せたかったんだ。スキーは滑るのも楽しいが、こうやって山の景色を眺めるのもいい。ハイキングや山登りが好きだと言っていた君ならきっと気にいると思った」

 彼のそんな心遣いに心がじーんと温かくなる。日本のスキー場にはまだ行ったことはないが、でも日本の山とは違った壮大なスケールの美しい白銀の世界が広がっている。
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