復讐は溺愛の始まり　〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
　「こ、婚約指輪って言ったって、私まだプロポーズもされてないんですけど」

　「『No』は受け付けないから、それでいいんだ」

　そんな彼をまじまじと見ていると、くしゃりと髪をかき上げて私から目を逸らした。何となくバツが悪いのか、耳が赤くなっている。いつも自信たっぷりなのに、こんな所がちょっと臆病なのが何だか信じられない。

　私はスポッと指輪を抜き取ると彼に手渡した。

　「一生に一度だけだから、指輪をはめてくれるところを見てみたいな」

　彼のことだから跪いてなんてキザなことはしないだろう。でもそれでも、この人生の大きな分岐点となるこの瞬間を一生覚えていたい。

　彼はのそりとベッドから起き上がると、指輪を持ったまま私に向き直った。そしてそれをギュッと握りしめると、胸に押し当てた。

　「逢莉。あのミスコンで君に恋をしてから、おそらく君が想像している以上に俺は君に夢中で……そして君を愛してる。君なしの人生はもう考えられない」

　そう言って彼はそっと私の手を取るとまっすぐに私を射貫いた。その澄んだ瞳は私への愛情で満ち溢れている。

　「これからの人生を俺と一緒に歩んでくれないか？一生君の傍にいて、君を幸せにすると誓う」

　「はい。喜んで」

　私は満面の笑顔で彼にこたえた。でも目の前がじわりと涙で霞んでくる。彼はそんな私の手にキスを落とすと、ゆっくりと指輪をはめた。そしてそこに誓いを封じ込めるかのようにキスをした。

　指輪のサイズはぴったりで、美しくカットされたダイヤがキラキラと輝いている。これからの私達の未来を表しているような気がして、涙がポタリと一粒零れ落ちた。きっとこの瞬間を一生忘れないだろう。
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