復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「すごく綺麗……」

 涙ぐんだまま婚約指輪を何度も眺めていると、彼は私を膝の上に抱き寄せた。

 「この指輪を見た時に、すぐに君を思い浮かべた。気に入ったか?」

 「うん、すごく素敵。ありがとう。一生大切にするね」

 満面の笑顔で見上げると、彼は嬉しそうに私の唇にキスをした。でもすぐにキスが濃密になってくる。彼は名残惜しそうに最後に下唇を吸うようにキスしてから離れた。

 「このままここにいると、また君を一日中抱いてしまうな。今朝は雪も止んでるみたいだし、また滑りに行くか?」

 彼が起き上がってカーテンを開くと、確かに雪は止んでいる。でも昨晩さらに雪が積もったのか、一面真新しい雪でキラキラと光っている。

 「うん!」

 「よし、じゃあ午前中できるだけ滑ろう。今日はもっと上の方に行ってみるか?」

 「うん。でも……どうして午前中だけなの?午後はまた天気が悪くなるの?」

 彼の言葉に昨日の天気を思い出しながら首を少し捻った。

 「午後は両親と汐梨と合流することになってる。年末年始はこうして毎年一緒に過ごすんだ。君に俺の家族を紹介したい」

 「ええっ、ご、ご両親!?」

 そんなの初耳で、思わずベッドの上に正座をしてしまった。でも……両親って……。

 「あの、ご両親って……崇人さんのお父様と、汐梨のお母さんですよね?」

 東儀ホールディングスの社長と、未だ一度も会ったことがない汐梨のお母さん。離婚したと聞いてはいるが、今でもそんなに行き来するほど仲がいいとは知らなかった。確か崇人さんのお父さんは今でも誰とも再婚せずに独身のままのはずだ。

 円満離婚だったんだろうか?離婚した夫婦でいまだに付き合いがあるなんて珍しい気がする。

 不思議そうに眉根を寄せている私にククッと笑いながら、彼は私の隣に腰を下ろした。

 「そうだな。両親に会う前に色々と説明しておかないといけないだろうな。まずは何から話そうか」

 彼は私の手を優しく取ると、ご家族のことを話し始めた。
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