7日間の光
【残り6day】


  今日も一番に教室に着く…はずだった。


 しかし、教室の扉の鍵が空いている。


  誰かがもう来ているらしい。


 珍しいな。


 そう思いながら中に入ると、そこには大川がいた。


 私に気づくと昨日のような笑顔を見せ、おはよう。と言ってくる。





 「おはよう」






  少し驚いたが挨拶を返して自分の席まで歩く。


 私とは真反対の窓側に座っている大川。


  心なしかさっきから視線を感じる。


 私が左を向くと頬杖を突きながらこちらを見ている大川と目が合った。


 目をそらそうと思ったとき、また突拍子もなく私の名前を呼んだ。





 「夜神さんって、


 いつもこの時間に来てるんだ」





 なんだか有益な情報でも知ったかのような口ぶりである。


 「うん」


そう答えると、ふーん。と言い、私の席へと近づいて来る。


 大川の足音に慣れてきたのだろうか、それよりも一歩の歩幅が大きいことに目が行った。


 そして私の前の席にこちらを向いてなぜか座る。


  私から何か言いたげな様子が伝わったからだろうか。


 また不思議と笑顔を浮かべて私に話しかける。


  「もう卒業だね」


  「うん」


  私は軽く頷き、返事をする。


 「いいこと思いついたんだけど」


  「……」


 「俺と卒業までの残り、


  カウントダウンカレンダー作らない?」


 絵描くの好きなんだ。


 と話す大川は目を輝かせて話している。


  「カウントダウンカレンダー?」


 初めて聞いた言葉だ。


 「そう!卒業までのカウントダウン!」


 「たとえば今日だったら残り6日って書く感じ」


  あまりよく分からないが、そんなに大変そうではない。


 目の前でこれでもかというほど期待の視線を向けられている。


 きっと楽しいから!と子供のようにはしゃぐ大川。


 なんだか少しやってみようかなと思い始めた。


 すごく突拍子もないなと感じながらも


  「いいよ」


  そう承諾した時にはすでに白紙の紙が用意されていた。


  私が答えるまでもなく、やる気満々じゃん。


 と思い、少し笑ってしまったがこれもこれで良いかと思えた。


  私も誰かと今更ながらに思い出を作りたくなったのかもしれない。


 残り6日という言葉を描きその周りにお互い好きなように絵を描く。


  私は中学生の時美術部だったが、今ではもうまったく絵は描いていない。


 でも久しぶりに描くと案外楽しかった。


 大川は普段の豪快さとは相反して、とても繊細な絵を描く人だった。





 「すごく綺麗」






 そう口にしたときには、


 すでに朝の光が差し込み私たちの足元を照らしていた。



 
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