7日間の光
【残り2day】


  残り二日は一人で一日ずつ書こうという話になり、私が今日を担当することになった。


  このカレンダーを書くのも最後かと思うと卒業という言葉が嫌でも頭に浮かぶ。


  明日卒業してしまったら、もう大川とこうして話すことはできない。



  この感情に名前を付ければ、これからもこうして一緒にいることができるのだろうか。


 今の私たちのこの関係に名前をつけようとしても当てはまる言葉が思い浮かばない。


  友達と呼んで良いのだろうか。


  きっと大川は私の事はなにも思っていないだろう。


  それが苦しかった。


 この関係が壊れたら、友達ですらいられなくなってしまう。





 「大川」
 





 私が名前を呼ぶと、なに?と私が描いていた手元から顔を上げてこちらを見る。




 「あのね私、…」





 大川のことが好きかもしれない。 





 そう、言葉にしようとしても声に出せない。


  今までこんな感情になったことはなくて、 どうすればいいのかわからなかった。




  時計の秒針だけが進んでいく。




 そして、私が言葉に詰まっているとき、廊下から誰かの呼ぶ声がした。




 「光~!!」




 その声を聞くと、焦った表情をして私の手を引いた。





 「ちょっと!」





  急に引っ張ったかと思えば、上着がかかっている椅子の後ろにかがんで座り、しーっと人差し指を私の顔の前にあてる。


 誰だろう。


 下の名前で呼ぶということはきっと親しい仲なのだろうか。


  大川の様子からすると知り合いなのは確かだ。


 だんだんと名前を呼ぶ声が近づいて来る。


  教室に入ってきたであろう足音。


 こんなに大川と近づいたのは初めてで、心臓の鼓動が聞こえてしまいそうだ。


 ばれないかという緊張が相まってさらに鼓動が早くなる。





 「あれ~いないな、光」





  そう言った後にその人は教室から出ていき、その声は遠のいた。





 「はあ…」





 「びっくりした」





  声に出した時に


 今お互いが抱き合っている体勢であることに気付いた。


  驚いて思いっきり離れる。


 そこで嫌でも分かってしまった。


 この気持ちはもうなくすことはできないと。


  大川も無意識だったようで、恥ずかしそうに顔を腕で隠している。


  その表情は私からは見えなかった。



 
< 7 / 10 >

この作品をシェア

pagetop