7日間の光
【last day 卒業 】


 ついに卒業式当日。


 「制服で登校するのもこれで最後か」


 言葉に出したら余計に悲しくなる。


 高校生活、あっという間だったな。


 特にこの一週間大川がいてくれたから全く寂しくなかった。


 むしろ話せば話すほど心が温かくなっていった。


 卒業証書を手にし、そして誰もいなくなった教室に今私はいる。


  大川は人気者だ。


  写真撮影や第二ボタンのお誘いが男女関係なく来ている事だろう。


 そう考えるとこの7日間は本当なら一生経験することのないものだったのだろう。


  きっと今、何人もの女の子から告白もされていると思う。


  この短い期間でしか関わったことのない私は勝てっこない。



 …分かっていた。



 分かっていたはずだけれど。




 「もうここに大川は戻ってこないんだな。」




  天井にぽつりと独り言を呟く。


 気を抜いたら溢れてしまいそうな涙を、かわいげもなくグイっと手で拭った。


 この教室を出たらこの気持ちも思い出にして心に閉まっておこう。


  覚悟を決めて椅子から立ち上がったその時、 後ろから走ってくる大きな足音が聞こえた。


  思わず振り向くと


 そこには焦った表情でこちらに向かってくる


 大川がいた。



 あまりの迫力に思わず一歩下がってしまう。



 上がった息を必死に整え彼は口を開く。











  ―――「俺の彼女になって」












  「…………、 


      








 ――――――...え、?」




  あの時、冗談だと思い何も感じなかった言葉が、 今は胸の奥を激しくかき乱す。


 私が顔を上げて緊張な面持ちのその視線と目が合うと急いで机に向かい、中から何かを取り出した。


 手元には半分に折られている白い紙。


 教室に前、探しに来たものこれなんだ。


 と言い私にそれを差し出す。




 「う、うん」




  その紙には 『卒業』という文字と共に、私の似顔絵が書かれていた。


  教室で、友達と笑っている自分。


  着ているその制服は夏服だった。


  前から私のことが気になっていたんだと、恥ずかしがりながら気持ちを伝えてくれる大川。


 そんな彼がたまらなく愛おしかった。


 これは絶対に言わないけれど。


 自然と口角が上がってしまう。




 「……大川には


 私がこんな風に見えていたんだね」




  さっきまで必死に抑えていた涙が止まらない。




 もう、この人にならどんな顔でも見られても良いとさえ思える。






 「私、ちゃんと笑ってた」






  今なら真っ直ぐとこの人の瞳を見れる。









  ―――「こんな私なんかで良ければ、






よろしくお願いします」





  突拍子もなく行動して思いもよらない言葉を口にする大川。




 君は私にあたたかい気持ちを教えてくれたね。




 私をこの青春の孤独から救ってくれたんだよ。





 「ひかる」





 なぜか、君の名前を口にしたら頬を伝う冷たさがいつにもなく温かかった。


  ―――君は、



 私の一番の『光』だよ。



  私の頬に手を当てる大川の大きな手のひら。



  包み込んでくれる温かさ。








 「―――大好き」  







 その言葉が口から溢れた時、心から笑えた気がしたんだ。



 
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