愛なんて空想だった
学校

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学校は嫌い

今さら友達なんて出来ないし、欲しくない。
でも周りの目が気になって休み時間はいつもトイレに籠る。
辛くなったらトイレでリスカする。何度かバレたけど担任が変わって馴染むのに忙しいだろうから今日はきっとバレない。そう思って筆箱からカミソリを取り出してポッケに入れた。
1番奥の個室に入ってまずすることは決まってため息。お疲れ様自分。少し休憩にしようのため息。この場所は空き教室が多くて誰も来ない。まさに私みたいな生徒のためにあるようなトイレだ。
カミソリのカバーを外して手首につけて、あと1秒。
その瞬間、コンコンとドアを叩かれた。

「愛川さん。居ますよね。」

男の声だ。あぁ、そうそう、黒木とかいう新しい担任の。
ってそうじゃないなんで、バレた?
とりあえずカミソリはポケットに入れて返事をした。

「なんですか?トイレ中なんですけど。」

「そこで、何をしているのですか。」

「.....」

完全にバレている。そう悟った。

「なんでもいいでしょ。」

「鍵、開けて貰えませんか」

「言ったでしょいまトイレ中なんです」

無視してカミソリのカバーをもう一度外す。

カチャ

しまった。いまわずか、わずかだけれど音を立ててしまった。でも、多分バレないよねなんて謎の自信があった。だって男が普通に生きてたらカミソリのカバーを外す音なんて聞いたことないだろうし。

「愛川さん!!開けてください!!今すぐに!!」

ドンドンと扉を激しく叩かれた。

完全にバレている。しょうがない、今日はもう諦めよう。

私は鍵を開けて外に出た。

男はすぐに私の腕の袖をまくった。左、右。
できたてほやほやの傷が見当たらなくてほっとしたようだった。でもその腕にあるのは昨日切った傷。昨日の夜はそのまま寝てしまったから、洗ってもいなかった。

「昨日のものですか?」

男が尋ねる。

「あぁ、はい。」

保健室に行って手当しようと腕を洗われて手を引かれるがまま保健室に行った。

保健の先生はちょうど居なかった。

「手当します。腕、だして。」

私は言いなりになるしか無かった。

「実は、筆箱からポケットに移す時にカミソリのようなものが見えたんです。確証はなかったけど。」

「当たって欲しく無い予感が当たってしまいました」

そう言って笑ってみせる顔は心配、それとも同情?どっちにしろ快いものではなかった。

新しい傷に消毒がしみた
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