愛なんて空想だった
「余計な、お世話でしたか。」

下から覗きながら聞いてきた。

「ううんなんて言ったら嘘になるけど、教師なんだし当然のことなんじゃない」

「どのくらいの頻度で?」

「さぁ?週4くらい」

「多いですね。」

「普通だよ」

「「.....」」

しばらく沈黙が続く。耐えきれなくなったように男が話し出す。

「困りましたね。もう話すことが無くなってしまいました。」

「実は私会話とか苦手でして」

「あっそ」

そんなこと興味無いし。

「......」

「名前、」

「?」

男ははてなをうかべたような顔でこちらを覗く

「あんたの名前。忘れちゃった。」

「あぁ、なるほど。私の名前は黒木です。黒木学(くろきまなぶ)」

「覚えて帰ってくださいね。」

優しく微笑むその目にはやっぱり同情のような視線が混じっていて私は少しイラッとした。

「黒木はさ」

「先生」

「黒木」

「せ、ん、せ、い」

「せんせーはさ」

「よくできました」

せんせーはぽんと頭に手をのせると終わりましたと優しく笑った。

「聞かないの。なんで〜とか良くないことだ〜とか、言わないの。」

「聞いたら教えてくれますか?」

「別に」

「なら聞いても意味はありませんね。」

「でも清水は...!」

「先生。」

「はぁ、もういいよ。」

私は呆れたように会話を諦める

「終わりましたよ」

そう言ってまくっていた袖を元に戻した。
手には下手くそな包帯が巻かれていた。

「へたくそ」

私は思わずクスッと笑ってしまった。

「ひど!」

そう言ったせんせーも少し笑っていた。
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