最強男子はあの子に甘い
「……乙部さんは妹さんよりそのお友達が心配だと」
「……ですね」
「女の子ですか?」
「はい。……妹と違って虫も殺せないような子で」
「その子がかわいくてかわいくて桜辰に来たら気が気ではないと?」

 悩みすぎていたのか、ぼんやりした乙部さんが私の踏み込んだ問いかけにも自然と一度頷いた。
 そのあまりの素直さに私はポカンと口を開ける。
 しかし無意識にイエスを示した自分に気づき、はっとした乙部さんはまた悩みをひとつ増やしてしまったというような顔をした。

「……榎本さん、このことは」
「だ、誰にも言わないです!」
「……特に……小坂さんには」
「ぜ、絶対に言わないです!」

 なぜか桜辰二年トップの乙部さんの秘密を握りしめることになりながら、彼も恋をするのだと気づく。
 乙部さんは胃のあたりをさすりながら、ふらふらとゆっくり私の元を去って行った。
 彼を悩ませる女の子の存在が気になって仕方がない。
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