最強男子はあの子に甘い
「乙部は自分のことになると不器用だよな」
「悩みすぎてふらふらになって廊下歩いてたくらい」
「俺に相談があるって会いに来たときも、何が起こったかと思うほど深刻そうな顔してた」

 あっという間に仲直りした彗くんと、屋上から見える景色を肩を並べて眺める。
 
「どうにか力になってやりたいけど、乙部の好きな子が入学決まったとしても俺は卒業してるしな」
「……そっか、次の春が来る頃には……彗くんいないんだ」
「そうだよ。……でも紗宇の恋人役は誰にも譲らないから」

 まだ卒業なんて遠いのに、でも気がつけばすぐにやってきてしまいそうだ。
 想像しただけで彗くんのいない学校生活なんて寂しくてたまらない。
 でも彼は、私のそばにずっといてくれる。
 そんな約束をしてくれた気がした。
 
「屋上はどうするの?……みんなに解放するの?」
「屋上は……それこそ乙部が気に入ってるみたいだから、鍵はあいつに譲る。俺が乙部に出来ることはそれだけだな」
「いいな、それ。次の恋がまたここで実るかもしれない」
「紗宇もけっこうロマンティストだな」

 彗くんが笑うと、私もつられて笑ってしまう。
 
 彗くんの恋人役を私だってずっと、誰にも譲る気はない――。
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