最強男子はあの子に甘い
 懐かしい公園を通りがかると、小学生の男の子と女の子が仲良く遊んでいた。
 それが羨ましく見えたのであろう周囲の子たちがからかいはじめ、途端に二人は居心地が悪くなったみたいに困っているようだ。
 さっきまで笑顔で仲良くしてた二人を微笑ましく見ていた私は、二人の笑顔を取り戻すべく公園にずかずかと足を踏み入れて行く。
 突然、自分たちのほうへと真っすぐに近寄ってくる私の顔が怖かったのか、からかっていた子たちは何もせずともあっという間に散って行った。

(え、私まだ何も言ってない……)

 ちょっとショックを受けながらも、仲良く遊んでいた二人へと笑顔を向けるべく振り返ると、明らかに警戒される。

「……大丈夫?」
 
 出来るだけさわやかに、そして優しく声をかけたつもりだったのに、次の瞬間『逃げろ!』とばかりに二人も駆け足で私から遠ざかっていくではないか。
 さすがに大ショックである。

 ちょっと懐かしの私のヒーローに憧れたつもりが、返されたリアクションとしては泣かれるよりも傷つくかもしれない。
 完全にただの不審者みたいになってしまった私はがっくり肩を落としながらも、遠ざかって行く二人がしっかりと手と手を繋いでいることに気がつけば、傷ついた心も忘れて思わず微笑んでしまった。

「俺の真似でもしたかったの?」
「ヒーローってむずかしい……」
 
 私にとって永遠のヒーローにそうぼやくと、ははっと笑い飛ばされる。

「急にずかずか公園入って行くから、何するのかと思った」
「だって……」
「気持ちはわかるけど、“あんまりなんでも首突っ込もうとしないようにね?”」
「……なんだか聞き覚えがある」
「言った覚えがある。……いまだに危なっかしいからな」
 
 『放っておけない』と言いだけに彼は私の手を優しく握った。
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