最強男子はあの子に甘い
 乙部さんの無難に聞こえるリアクションは、面白いことを聞いたとでも言いたげにも聞こえた。
 そのあとは黙って後ろに手を組み、にこにこと微笑んだまま。
 乱闘現場でシルバーヘアーくんと対峙する彗くんをただ見守っている。
 乙部さんがそうしているからか、道は開けたままだ。

 シルバーヘアーくんは、彗くんを見てにやりと笑った。
 対する彗くんは表情ひとつ変えず彼を見つめている。

「真面目に式に参加しろとは言わない。ただ、無駄に場を荒らすのも見過ごせない」

 彗くんが腕組みしながら、落ち着きのある声でシルバーヘアーくんをたしなめた。
 すると大きな声でそれを笑ったシルバーヘアーくんが、彗くんに飛び掛かるように攻め入る。
 
「それを真面目って言うんじゃねーの?」

 素早い上に力強そうなパンチが右手から繰り出され、彗くんの顔面にあっという間に届いた。
 ……ように見えたが、シルバーヘアーくんの動きがぴたりと止まる。
 彗くんが彼のパンチを片手で受け止めていたのだ。
 そして次の瞬間には彗くんの足が彼の足を静かに払い、体勢が崩れたシルバーヘアーくんは呆気なく床に倒れ込んだ。
 しん……と静まりかえった体育館に、大きな体が床にぶつかる音がずどんと響く。
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