最強男子はあの子に甘い
「名前は?」
「……永田圭音(ながたけいと)、です」
「そう。面白そうだから一年のトップはお前にする」
 
 彗くんは顔色ひとつ変えずシルバーヘアーくんこと永田くんとそれだけ言葉を交わすと、再びズボンのポケットに手を入れてこちらへと向かってくる。

「乙部、そもそも式が長い。飽きてケンカする気持ちもわからなくはない」
「僕、式には関わってませんけど?それより、ずいぶんあっさり決めましたね。一年のトップ」
「俺にまともに向かって来ただけ面白かったから」
「まあ、確かに」
「圭音のことは任せた」

 淡々とした会話を乙部さんと交わしたあと、ちらっとこちらを見た彗くんと目が合う。
 
「あんまりなんでも首突っ込もうとしないようにね」
「は、はい……」

 小さく返事をすると、私の元を通り過ぎた彗くんが少しだけ振り返って微笑んでくれた気がした。

「あなたの入学を知ってから“ケガさせないように”って彗さんに言われてるんですよ」
「え?」

 体育館を去る彗くんの背中が小さくなっていくのを目で追っていると、隣で乙部さんがそうこぼした。
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