最強男子はあの子に甘い
負けねぇし!
「紗宇、ごめんて!悪かったって!屋上で何があったか知らねぇけど!そろそろ顔上げろよ!」
「永田くん、もう少し反省の色を……」
「たけるのほうが紗宇の扱い上手いだろ!なんとかしろ!」
 
 屋上から教室に戻ると、私は黙ったまま席に座って机に突っ伏した。
 永田くんにいくら話しかけられても、謝られても、何も答える気になれない。
 授業もサボり同然のように机に突っ伏したまま、ただ席に存在していたのみである。
 それでも叱られない桜辰で良かったとつくづく思う。
 一日の授業を終えて帰る頃になっても、そんな調子の私を永田くんと湯川くんはひどく心配してそばにいてくれていた。

「紗宇ちゃん?」

 湯川くんに優しく名前を呼ばれて、やっとの思いでゆっくり顔を上げる。
 すると湯川くんはほっとしたように微笑んでくれた。

「え?名前呼ぶだけのたけるには反応すんの?」

 納得がいかない様子の永田くんをちらっと見ると、色々思い出してしまってため息しか出ない。

「そして俺にはそんなデカイため息?」
「……知ってたの?……屋上に彗くんがいること」
「まあ……なんとなく?何?あ、フラれた?」

 永田くんらしい軽いノリで傷口を思いきりえぐられて、私は再び机に突っ伏した。
 もう起き上がれる気がしない。

「圭音!」

 タイミング良く咎めるように永田くんを下の名前で呼ぶ声が教室に響いた。

(彗くん……?)
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